//「外国人に貸したらトラブルが心配!?」外国人入居拒否の問題について

「外国人に貸したらトラブルが心配!?」外国人入居拒否の問題について

今回は、外国人入居拒否の問題について

弁護士の吉川淳先生にお話を聞きました。

 

「外国人入居者に慣れていない日本人オーナーが多いのが現状。」

 

日本では外国人が入居を拒否されることがあると聞いたのですが、法律はどうなっているのですか?

最高法規である憲法に法の下の平等を求める権利が定められています。ただ、オーナーが所有物件を貸すかどうかは、借主、申込者の収入、信用や国籍を含めた諸要素を審査して賃貸契約を承諾するかという総合判断が関わるので、一概に、日本で外国人入居拒否という不平等が横行していると断定もできません。

日本に独自の背景が有るのですか?

日本人のオーナーに限って言うと、彼らに差別意識があるというよりは、外国人入居者に慣れていないという実績不足の事情や日本人に貸した方が安心だという先入観はあると思います。ただ、私が自由平等博愛の国フランスで物件を借りようとしても、フランスに定着してない日本人の私が借りにくいのと状況は日本に限らず似ていると思います。

でも、私の知り合いには、日本で入居拒否されたと不満をもらす外国人が結構いるのですが、どういうことですか?

契約までの審査過程と拒否理由が借り手サイドには見えないという面は影響していると思います。
古いタイプのオーナーは伝統的に日本人にしか貸したことがないオーナーが多いので、賃貸契約をするのに慎重になる結果、経済的信用度が高い他の申込者(日本人の申込みを含む)を契約相手に選び、外国人申込者が契約審査を通らなかったという結果が起きるケースはあると推測します。これは審査過程を知らされない外国人にとっては、外国人であることを理由に不当に入居拒否されたと感じるのも当然と思います。

拒否されたら理由をオーナーから教えてもらえるのでしょうか?

仲介業者を通じて教えてもらえる可能性はあります。しかし、信用面で完璧な外国人申込者でもない限り、「先に申込みしていた者に契約が決まった」、「同時期の他の申込者のほうが収入や保証人の信用度が高い」など、体よく断られる可能性はあります。オーナーの回答内容が拒否の本当の理由かは借り主サイドには確認しようがないというケースも多いでしょう。

 

「今後は外国人の入居審査も見直されていくべき。」

 

それでは外国人は安心して申し込めないのでは?

審査にブラックボックスみたいな面があるのでは安心して日本に住めません。今の状況は変わるべきです。もっとも、日本に入国・就職したばかりで短期の在留資格しかない外国人が、好きな物件に入居できるかというと、経済的信用の面で賃貸審査は厳しくなるのが現状です。

 

「慰謝料請求の可否はケースバイケース。」

 

外国人は不当に入居拒否されたら、どうすればよいのですか?

正当な理由がないのにオーナーが入居拒否したケースでは、仲介業者を介して、法の下の平等を主張して契約を再申込、協議することができます。オーナー側の審査過程が不透明なため、再度拒否されたり、仲介業者が親身に協力してくれないというケースはありえます。
そういうときは、外国人はオーナーに慰謝料を請求する選択肢があります。

私も弁護士として外国人から慰謝料に関連する法律相談を受けることがあります。
ただ、他者からの申込が競合する場合など、結果として外国人の入居を拒否することがあり得ますので、拒否理由が外部から見えにくいため、拒否が違法とは即断できません。

違法に入居拒否された場合、慰謝料はいくらくらいなのですか?

日本では入居拒否が裁判に至ったケースは少なく、入居拒否の慰謝料額の「相場」は厳密には作られていないのですが、裁判所の判例(京都地裁判決。平成19年10月2日)の中には、慰謝料等合わせて合計110万円の賠償義務を認めた判例もあります。このケースは、韓国籍の女性が仲介業者を通して入居を申込み、敷金と礼金を支払ったのに、入居直前に外国人登録証明書を提出したところ、オーナーが契約締結を拒否したというケースで、敷金等の諸費用を払った後に拒否されたという特殊性があります。
これに対し、入居直前よりも前、例えば申込直後に、外国人であることを理由にオーナーが拒否する事件については、証拠をもとに慰謝料を命令した判例は少ないです。類似ケースについて100万円前後の慰謝料の命令を裁判官が出してくれるとは限りません(10万円未満という判決もありえます。)。

慰謝料請求の可否はケースバイケースですので、お困りの際はお近くの弁護士への法律相談をご検討ください。

外国人は慰謝料などの金銭がほしいというよりは借りたいだけだと思うのですが、外国人はどうすればよいでしょうか?

例えばリアルエステートジャパンのように、外国人サポートの実績を有する会社のホームページから探すと、外国人を不当に差別しないオーナーの賃貸物件を探せるのではないかと思います。

 

「日本人入居者にこだわってはいられない時代がやってくる。」

 

外国人から見れば差別されたと感じやすい今の状況を変えるのは難しいでしょうか?

変わっていくと思います。差別の解消という点では消極的な話になりますが、日本全体では今後、少子化と超高齢化により人口が減少していくことが確定しています。既に地方では、一軒家の空き家とマンションの空室問題が深刻な社会問題になっています。日本全国でみれば、13.5%以上の建物が既に空室という報道(参照:総務省の統計調査)もあるくらいで、オーナーも収入減を意味する「空室」という言葉には敏感になっています。将来は、空室率が3割を超えるという予測もされています(参照:野村総合研究所などの研究)。
外国人が集まる東京都内でも、超人気エリア(港区など)を除くと、数年後には地方と似た問題の深刻化が始まります。
逆に、都内で物件を安く借りたいという外国人・日本人にとってはこれは良い話です。今はどちらかというとオーナー有利のマーケットと評価できますが、将来は「より取り見取り」とも言える、借り手が王様という状況に変わるでしょう。需給バランスが崩れて、オーナーは外国人であることを主な理由に拒否する悠長な状況ではなくなります。
経済的信用度の確認手続きは残り続けるものの、国籍に関係なく「入居者にリフォーム代プレゼント」、「外国人大歓迎!英語でのサポートあり!」といったように、申込を熱望される時代が来るでしょう。

外国人入居者に対する偏見自体がなくなりませんか?

仮に外国人の日本在留者が今より増えて、オーナーの外国人に対する賃貸経験値も地道に増え、「日本人入居者にこだわらなくても大丈夫なんだ」と、偏見や差別が早く是正されることが期待されます。
今後、オーナーは否応なく意識を変化せざるをえません。
地方では今既にそういう意識変化が始まっていると思いますし、東京都内も、そう遠くない将来に、地方と似た形で入居差別問題が減り始めることが期待されますし、憲法の観点からも、日本はそうならなければいけないと私は思います。

プロフィール

吉川 淳 (Jun Yoshikawa)

弁護士 / 銀座中央総合法律事務所

銀座中央総合法律事務所のパートナー弁護士。グローバルに活躍する日本企業の顧問弁護士を務めるほか、日本の不動産等に投資している外国人(海外居住の投資家)や、日本に在留する外国人、日本で会社を立ち上げる起業家をサポート。外国人と取引のある不動産企業のサポートもしている。

2017-09-26T12:40:05+00:00 2017年9月21日|カテゴリ: 専門家コラム|タグ: , , , , , , |