//【不動産に強い弁護士が解説】日本の不動産なのに、外国で売買契約書を結べば印紙は不要?

【不動産に強い弁護士が解説】日本の不動産なのに、外国で売買契約書を結べば印紙は不要?

今回は、外国で日本の不動産を契約した際の印紙税について。

弁護士の吉川淳先生にお話を聞きました。

 

「印紙税には海外特例がある」

 

ーーー昨年、私が投資用マンションを買ったときに契約書に収入印紙を貼ったのですが、あの印紙は何で必要なんですか?
それは印紙税という税金ですね。税務署窓口で納付する方法とは違いますが、郵便局等で印紙を購入し、契約書等に貼り消印を押すことで納税したと扱われる方法です。

ーーー私は印紙を貼った売買契約書を税務署に提出していませんが、税務署はどうチェックしているのでしょうか。
税務調査または申告などのきっかけがない限り、多忙な税務署は常時のチェックをしてはいないようです。

ーーー印紙税には海外特例があると聞いたのですが、本当ですか?
通達で「文書の作成場所が法施行地外(注記:日本以外)である場合の当該文書については、・・法は適用されない。」というルールがあります(印紙税法基本通達49条)。

 

「売買契約が外国で成立した場合、印紙税は原則かからない」

 

ーーー印紙税がかからない典型例はどのようなケースですか?
日本以外に住む両当事者がその外国で契約書(日本の不動産の売買)に署名・捺印(以下「サイン」と記載します)をするケースです。

ーーー売主が日本に居住、買主が日本以外に居住する外国人であるケースはどうですか?
日本で売主が契約書2通に先にサインし、郵送を受けた外国人がその外国でサインし、売主分の契約書控えが売主側の仲介業者に返送された場合は、外国で契約が完了しているので、印紙税はかかりません。

通達の「作成場所」というのは、売買契約の当事者双方のサインがされ、合意が完了した場所ですので、日本以外の国で一方の当事者がサインし合意を完了した場合は印紙税はかからない理屈です。

ーーー先に外国で契約書2通にサインがされた後、売主が日本でサインした場合はどうですか?
このケースは契約の完了場所が日本なので印紙税はかかります。さっきとサインの順番が変わっただけで不公平な面があるのですが、契約の成立場所という基準を国税庁が採用しているので、現状ではこれが原則です。

ーーー外国人買主が外国で合意を完了した契約書(印紙を貼っていない自分用の控え1通)を一元管理のために自分サイドの日本の不動産業者に郵送し日本で保管をする場合、印紙税がかかることはあるのでしょうか?
契約の成立場所が日本以外である以上、成立後に契約書を日本に郵送したからといって印紙税がかかり始めるわけではありません。先ほどの通達にも「保存が法施行地内で行われるものであっても」適用されないと明記されています。

ーーー外国居住者が日本人の場合でも同様に非課税になるのでしょうか?
はい。国籍を要件にしているわけではないので、外国居住者が日本人の場合でも売買契約が外国で成立した場合は印紙税はかかりません。

ーーー契約書は昔と比べれば安く外国に郵送できるので、外国居住者が当事者である売買では、印紙税の節税ができるということでしょうか。
脱税は許されませんが、買主が外国人投資家であるなど何か事情があって日本以外の国で締結する場合は、違法性はないといえます。

ーーー外国人の買主が日本で在留資格を持っているものの、日本以外の国に長期滞在していた期間中に契約を締結した場合は、海外で契約を締結する必然性が無いこともあるので、日本で契約したものと認定され印紙税が課税されるのですか?
そのことは印紙税法にも基本通達にもはっきり述べられていない部分なので、必然性の大小次第になります。海外に滞在中の日本人でも非課税の要件を満たす可能性があるので、それとのバランスから、外国人が(日本以外で長期滞在中にサインを行う事情があるのに)日本での在留資格を持っている一事をもって、税法上不利に扱われることはないと考えます。

これに対し、国籍を問わず、日本以外でサインをする必然性が全くないのに、滞在中の国でサインし印紙を貼らないで済ますと、いざというときに脱税と指摘されてもしかたないですね。

ーーー非課税を確実にするために注意することはありますか。
契約書に合意が成立した国名等を明記したり、パスポート等のコピー(例えば、写真の頁と居住国への入国スタンプが押された頁)を契約書に添付するとベターです。仮にこれらがないと、いざという時に、税務署は非課税と扱ってよいものか確認しようがなく、結果として印紙の貼付を求められることもありえます。当人の証言だけではなく、書類審査により要件を確認できる方が良いですね。

 

「印紙税法に違反すると、過怠税が課税される」

 

ーーーちなみに印紙税法に違反すると、罰はあるのですか?
印紙税を貼るべきなのに貼らないケースでは、貼るべき印紙額の3倍が過怠税として課税されます。

ーーー今後も日本国外で締結すれば印紙税は非課税のままなのでしょうか?
将来に印紙税法が改正されないという保証はありませんので、将来、印紙税のことで悩まれたときは税理士に相談することをお勧めします。また、日本国の印紙税がかからないとしても、締結国である外国から契約書に関する税金を課税されるリスクがゼロとはいえません。極端に心配してもしょうがないのですが、税法なので完全な非課税ということはないです。

ーーー将来の改正で印紙税がかかったら節税はできなくなるのでしょうか?
まあ、印紙税は納めると投資事業の経費にする余地がありますので、過度に節税に躍起になる必要はないかもしれませんね。

 

 

参照 印紙税基本通達

49条 文書の作成場所が法施行地外である場合の当該文書については、たとえ当該文書に基づく権利の行使又は当該文書の保存が法施行地内で行われるものであっても、法は適用されない。ただし、その文書に法施行地外の作成場所が記載されていても、現実に法施行地内で作成されたものについては、法が適用されるのであるから留意する。」

 

 

プロフィール

吉川 淳 (Jun Yoshikawa)

弁護士 / 銀座中央総合法律事務所

銀座中央総合法律事務所のパートナー弁護士。グローバルに活躍する日本企業の顧問弁護士を務めるほか、日本の不動産等に投資している外国人(海外居住の投資家)や、日本に在留する外国人、日本で会社を立ち上げる起業家をサポート。外国人と取引のある不動産企業のサポートもしている。

2017-10-10T13:12:10+00:00 2017年10月10日|カテゴリ: 専門家コラム|タグ: , , , , , , , , , , , |